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「はるばるよく来られた」
涼の王の子、昌は、勇壮で知勇を備えた王として一躍有名になった王である。
「人心の尊敬篤い蘭王女。施薬院などで奉仕したり、困ったことがあったら各国の仲裁に行ったり、国王をよく助けているそうだ。賢明で聡明な王女として名をなした。訪問は栄誉である」
(やっぱり憶えているの?)
聡明、容姿端麗、国民奉仕、控え目で今や誰からも慕われ、尊敬される蘭だが、小さい時、少々、やんちゃだったことがある。
「あんた、私と戦いなさいよ。この私は世界最強、男すらひれ伏させる王女。男は英雄なら、勝って名を上げる。それが女に出来ないことがあろうか。私も勝って、今から名を上げる、さあ、戦いなさい、さあ、その木刀を持って、向かって来なさい」
あの頃は、子供で、男も女も分からず、ただ、父に仕える于文将軍が格好良くて、憧れて、英雄になりたい、将軍になりたい。姫でもなれると勘違いして、誰彼構わず喧嘩を売っていたのだ。
今の蘭とはまったく違う。いっときの暴れ馬。あばずれ。いややはり、暴れ馬と言うほうが響きは良い。
あの頃だけの特別なこと。病にかかっていたのだ。
ああ、思い出したくもない、恥ずかしい記憶。
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