119人が本棚に入れています
本棚に追加
「何で開いてるの?」
「あ、これは、多分私が動き回って、閉まりが弱かったのか開いちゃって、閉めようと思って近付いてた」
律と話すのにこんな緊迫した雰囲気は初めてだった。
律が近付いてくるのに合わせて、私は少し後退りする。
初めてだった、怖いと感じたのは。
律は私に近付くと、触れたのは私ではなくて、物置の部屋のドアノブだった。
そして、そっと扉を閉める。
「良かった、この部屋だけ片付いてなくて幻滅されたくないし。」
安堵した様な表情と声をこぼす律に、雰囲気は柔らかくなる。
「というか、何でここに?」
「驚かせたくて、今日は私か律を尽くしたくて」
そう言うと、律は嬉しそうに笑っている。
「居てくれるだけで癒されてるから良いのに。ありがとう、遥香」
お礼を言って、私の唇に軽くキスをして離れる。
ドキドキするその行動で部屋のことはすっかり頭から抜けていた。
最初のコメントを投稿しよう!