1 違和感

19/21
前へ
/88ページ
次へ
「何で開いてるの?」 「あ、これは、多分私が動き回って、閉まりが弱かったのか開いちゃって、閉めようと思って近付いてた」 律と話すのにこんな緊迫した雰囲気は初めてだった。 律が近付いてくるのに合わせて、私は少し後退りする。 初めてだった、怖いと感じたのは。 律は私に近付くと、触れたのは私ではなくて、物置の部屋のドアノブだった。 そして、そっと扉を閉める。 「良かった、この部屋だけ片付いてなくて幻滅されたくないし。」 安堵した様な表情と声をこぼす律に、雰囲気は柔らかくなる。 「というか、何でここに?」 「驚かせたくて、今日は私か律を尽くしたくて」 そう言うと、律は嬉しそうに笑っている。 「居てくれるだけで癒されてるから良いのに。ありがとう、遥香」 お礼を言って、私の唇に軽くキスをして離れる。 ドキドキするその行動で部屋のことはすっかり頭から抜けていた。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!

119人が本棚に入れています
本棚に追加