3 愛の重さ

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 久しぶりの仕事は全部女性社員から引き継ぎを受けた。  男性社員も私に気遣ってくれる人はいたのに、そういう方々に素っ気無く最低限の会話に抑えなければならないのがすごく心苦しくて、疲れた。  それに外に出ることで、ようやく本来の考えが少し戻ってきて、今の状況がどれほどおかしいものか理解できる。 「お疲れ様、遥香。」  後ろから声を掛けられて振り返ると、そこには少し微笑んでいる律がいた。会社では相変わらず人当たりのよさそうな表の顔。 「…お疲れ様。」  いろいろと考えが落ち着いてきて、律のことはやはり憎いと思う。  本来あるべき生活とは程遠いからだ。律に気を使って男性だからという理由で距離を取り、男性と話すのが少し怖いと思うようになってしまったこと。  それで女性社員しか頼れなくなって、自分で仕事をやりづらくしてしまっていること。  本来ならば、私は誰とでも楽しく会話ができる人間だったのに、それも奪われ、仲の良かった後輩ですらも奪われた。  許せない、だけど、律のことは怖い。捨てられたくない。

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