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ふと考えてみた
墨と雪
2つは真っ黒と真っ白で当たり前に全然違う。
じゃあ、真っ白な雪に墨で字を書いてみたらどうだろう?
目前に広がる雪景色をキャンバスに見立て、墨汁を使い、思いを込めて思いっきり大きな文字を書いてみた。
文字は雪に染み込んで凹んだが、白銀のキャンバスに書かれた真っ黒な文字は、迫力満点でなかなかの出来だ。
満足してそのまま放置していたら、よりによって雪は降り止み、日が差してきた。
せっかく書いた文字がどうなったか気になって、外へ見に行った。
すると、文字は溶けた雪と混ざりあってひとつになり、同じ液体となってゆっくりと排水溝へ流れていく。
正反対の墨と雪は、同化して正反対じゃなくなった。
せっかく『愛してる』って書いたのに、ドロドロになって消えていく。
すごく残念だし、がっかりした。
けれど、たとえ姿は消えても……願いはきっと叶う。
そんな気がした。
正反対の2つが、同化してひとつになったように……。
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