0人が本棚に入れています
本棚に追加
ためしに読書させてくれ
読書の楽しみがわからない男子高校生がいた。
恋の妄想と動画を見ること、そして好きな子に好かれるために身体をきたえることが趣味で活字を読むなんて習慣が男子高校生にはなかった。
ずっと目をつけていたインターネットでもとびきり可愛いと話題を集めている女子高校生がいる。
きっと彼氏なんてとっくにいるんだろうなあと思い浮かべながらも男子高校生は彼女にみとれていた。
彼女はいつもは誰かと談笑しているのに今日は机に手を置いて一冊の本を読んでいた。
「ほ、本?しかも紙の?」
男子高校生は妄想する。
『もし彼氏がいたとしてもその彼氏は本を読んでないかもしれない』
いそいで数少ない書店へむかい、キャッチコピー丸出しではない本を一冊買ってきた。
運命の一冊!まではいかないかもしれないがほぼ初の読書をするための本になった。
『なら運命の一冊なのでは?』
とも男子高校生は考えたが全ては彼女とお近づきになるため。
他人から見ればいやらしく思われるかもしれないのでお口はチャックだ。
そして男子高校生は寝転がって本を読み始めた。
う~ん。
国語の点数は悪くない男子高校生でも想像しにくい。
文章を読むたびにいたいち辞書やスマホ使って調べないといけない。
あれ?国語の成績関係ない?
男子高校生はなんとか本の世界にひたろうとしていた。
するとさっきまで部屋だった場所から土のしめったにおいに変わっていった。
男子高校生は20ページまで読み進んだ時にジュースを飲もうとして目をはなすとそこは密林だった。
変な夢でもみているのかと思ったが密林は心霊スポットのように不気味で地球にいる生き物たちにしては歪な姿だった。
たとえるならアニメでよくみるファンタジーな存在ばかり。
ゴブリンはさすがにいなかったが見た事のない生き物にラップ音、冷たい人の腕が男子高校生をつつむ。
たしか本に書いてあった。
密林怪奇現象!!
そんな本を読んでしまっていたの?
男子高校生は少しずつ和洋中まじる世界のもののけに攻撃されて死を覚悟した。
「せめてあの子と二人で会話したかったなあ…」
げほっ!
せきこんだあとに男子高校生は部屋で目が覚めた。
気絶していたようだ。
読んでいた「密林怪奇現象」はただの本として文字がきざまれたまま男子高校生のそばに落ちていた。
夢ではなかったことだけはたしかだ。
鏡で首を確認すると跡がのこっていたから。
◆ ◆ ◆
いつものように学校で授業をうけてあっという間に放課後。
いつものように例の女子高校生を見ようとしていると後ろから声をかけられた。
「気になる視線があったから声をかけてみたよ」
え?
今まで会話なんてしたことなかったのに。
彼女は男子高校生の耳のそばでささやいた。
「あなたが本を読むたびに遊びに行くね」
そうか。
あれは全部罠か!
最初のコメントを投稿しよう!