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嵐到来
熱が下がって学校へ登校したのはそれから2日後のことだった。
「へえ、それで泊まったの」
放課後、クラブの2階で泉の家に泊まったことを伝えると、彩香は顔をにやりとさせてそう言った。
私とは向かい合わせ、彩香の隣に座るいとは「泊まり⋯⋯」と目を見開いている。
「うん。すごくお世話になった」
前から優しいとは思っていたけど、泉はとても面倒見がいいというか。
私が休んだ昨日、泉は学校へ行っていたけどクリーニングに出していたという私の制服を持ってお昼に帰ってきた。
お金を出すと言った私を泉は断固として拒否したけれど、そのかわりに私がご飯を作ることになった。
泉はどうも料理が苦手らしい。
そして夕方になると、すっかり体調が戻った私を家まで送ってくれた。
「泉くんがねえ⋯」
「意外だね。古賀くんがそんなことするなんて」
彩香といとが驚いたように声を漏らす。
「古賀くん?」
誰のこと?聞き慣れない名前に思わず聞き返すと、彩香が呆れたようにため息をついた。
「泉くんの苗字よ」
「古賀泉⋯⋯」
そういえば下の名前しか知らなかった。私よりも2人のほうが知っていることが多いらしい。
「まあいいわ。それで、いじめの方も無くなったのね?」
「うん」
彩香の言葉にコクンと頷く。そうなのだ。今日学校に行くと誰とも話さないのは相変わらずだけど、嫌がらせは何ひとつされなかった。
それどころか、怯えたように私を見ている人すらいた。
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