日常

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そもそも普通は、私とお嬢様である彩香が接点を持つなんて不可能に近いことで、こんな風な仲になるまでにはそれなりに理由があった。 香織さんの旦那さんである、恭平(きょうへい)さんの仕事の関係者である彩香のお父さんは、娘を警護する人物を探していた。 彩香の家は経済界でとても大きな力を持っていて、“西宮”の名は、一般人の私でさえ知っている。 彩香は西宮の有力な跡取り候補であり、それゆえ外部からの注目度も高い。西宮に取り入るために、将来有望な彩香を利用しようとする人間も少なくない。 危険にさらされる前にと、彩香の父親は彩香に護衛をつけたが、当の彩香はこれを拒否したのだ。 「黒いスーツの大きな男達に四六時中近くにいられるのは耐えられない」と言って。 ⋯⋯護衛の人が可哀想な気もするけど。 彩香は本当に嫌だったようで、周囲の予想以上にかなりの間抵抗し続けたそうだ。 そこまで抵抗されては、プロの護衛は諦めざるを得ない。だからといって、誰も護衛を付けないわけにはいかない。 困り果てた彩香の父親。そこで相談を受けた恭平さんから名前が挙がったのが、私だった。 恵美子さんと暮らしていたとき、自分の身は自分で守れるように、と私は色んな護身術を習わされていた。 彩香と同性で、年齢も一緒。 しかも見た目では護衛だとわからないため、彩香が1人でいると思った刺客が近づいてくる。 あちらから姿をさらすのだから探す手間が省ける。そして彩香に傷がつかないよう私が動くだけ。 私は最高の適任者というわけだ。
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