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「⋯⋯作ってみて、無理だったら沙羅に聞こうと思ってた」
「うん、ありがとう。じゃあ交代ね」
「熱、あるだろ」
「大丈夫だよ。もう微熱だし」
納得していないのか、しょんぼりしたように私を見る泉に笑みがこぼれる。
私の体調を心配して慣れないことをしようと頑張ってくれたらしい。泉はすごく優しい人だ。
「今日は珍しいことが起こるもんだな」
私と泉を見ながらそう言った彼はタバコを取り出して火をつけている所で、泉が「おい」と静止する。
「ここで吸うな」
「なんでだよ」
「沙羅いるだろ」
「ああ?うるせえな。ここは俺の家だ」
⋯⋯この男達は、いつもこんな調子なんだろうか。
「私は大丈夫です」
「話がわかる女じゃねえか、沙羅」
ニヒルな笑みを浮かべてそう言った男は、火を付けたタバコを吸って気持ちよさそうに吐き出す。
「沙羅って呼ぶな」
「うるせえな、てめぇはこの女の犬かよ」
彼は藤城達真というらしい。タバコを1本吸い終えると、彼はリビングを出て行った。
「あの人と2人で住んでるの?」
「ああ」
隣に立った泉は「本当に大丈夫か」と私の顔を覗き込んで心配そうに言う。
それに心が暖かくなるのを感じながら、コクンと頷いた。
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