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放課後、家に戻ってしばらくすると、滅多に鳴らないインターホンが鳴り、来客の訪れを告げる。
「どうぞ」
画面越しの彩香にそう言って、脱いだ制服をハンガーにかける。
「うん、やっぱり似合うわ。まだ完成じゃないけど」
部屋に入ってきて開口一番、私の姿を見て満足気にそう言った彩香の手には鞄があった。
「⋯⋯それ?」
「ふふ、念には念をって言うでしょう?」
⋯⋯ああ、もうすでに気が乗らない。
機嫌良くガサゴソと鞄を探る彩香に、思わず顔がひきつる。
鞄から取り出したウィッグと化粧ポーチを持って近付いてきた彩香は、にっこり笑って言った。
「大丈夫。私、かなり上手いから」
家を出る頃にはもう外は暗くなっていて、待機していた彩香の家の車に乗り込む。
「⋯⋯ここまでしなくてよかったのに」
特に疲れることはしてないはずだけど、何故だか疲労感漂う表情でそう呟いた私に、隣の彩香がくすりと笑う。
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