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明るい茶髪のウィッグをつけてメイクを施された私は普段の姿とは全くの別人になっていて、自分でも鏡を見てびっくりしてしまった。
「あら、いいじゃない。目的は果たせてるわ」
満足そうに言う彩香に、遊ばれた感じがしないでもないけれど。
そのくらい、私の改造を嬉々として楽しんでいた。
「まぁ⋯⋯いいけど」
でも確かに、これで“私”がわかることはない。その点はかなり安心だ。
隣に座る彩香も今日はいつもの制服姿ではなく、ひざ上まである紺色のワンピースを上品に着こなしている。
私はというと。
「⋯⋯⋯」
ショートパンツに大きく肩が開いた黒のオフショル、おまけに茶髪に濃いめのメイク。いつもはこんなに露出した服を着ることがないから、かなり違和感がある。
「もうすぐ着くわ、沙羅」
空気にさらされた肩を小さくさすっていると、窓の外を見ながら彩香が言う。
彼女とは反対側の窓の外を見ると、暗い空に広がるネオン。繁華街は人で賑わっていて、お店の前で客引きをする人や、飲み屋に入っていくサラリーマンが見える。
今の私と同じような髪の色をした女の子もたくさんいる。
「すごいわね」
私同様、普段は繁華街に赴くことのない彩香も、その光景を珍しそうに眺めていた。
その後しばらくして、車は大きな建物の前で停車する。
⋯⋯ここか。
予想はしていたけど、体験したことのない繁華街のきらびやかな雰囲気に、身体に微かな緊張が走る。
「行きましょうか」
彩香の言葉に頷いて、2人一緒に、車を降りて大勢の人達に溶け込むように中に入った。
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