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小さく視線を合わせた男達は、ごくりと喉を鳴らすと怯えたような瞳でこちらを見て。
「あ⋯そう言うことなら⋯⋯」
「⋯⋯俺らは遠慮しとくわ」
じゃあ、若干顔色が悪くなった男達は逃げるように去って行った。
「まったく、さすがだわね」
「⋯⋯彩香もね」
とんでもない威圧感。あの男達青ざめてたよ。まあ、離れてくれたからいいんだけど。
彩香の“さすが”という言葉は、きっと“上”にいる人物達に向けて言ったことだろう。
そんな会話をしながら階段に近づく私達に、周囲の人はまさかという表情をして視線を向ける。
「沙羅」
階段を前に、立ち止まった彩香がこちらを向く。
「⋯⋯本当に、」
彩香の口が止まる。
これはきっと最後の確認だ。わかってる。この階段を登ったらもう後には戻れない。
私が望んで、私が選んだ道。
「行こう」
不安を振り払うように、前に足を進めた私の後ろ。無言で小さく頷いた彩香が続いた。
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