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「彩香⋯」
目の前のいとの瞳も不安に揺れているのが分かる。
時雨と修二が入ってきたのはその時で、好きに過ごしていた男達も彼らの登場に動きを止めて「お疲れ様です!」と丁寧にお辞儀をする。
「2人とも来てたんだね」
「修二と時雨は、出かけてたの?」
「⋯てめぇ、わざとやってんだろ」
⋯⋯なんだか不快な声が聞こえた気がするわ。
思いきり顔を歪めて声のした方に視線をやると、今日もタバコをふかした男と目線が交わる。
「あら、いたの」
「チッ」
盛大な舌打ちをした達真は私の隣にある1人掛けのソファに腰を下ろす。
「隣に座らないでくれるかしら?あなた煙いの」
「俺に指図してんじゃねえ」
⋯⋯⋯本当に嫌だわ、この男。ただでさえ考えることが多くてイライラしているのに、これ以上イライラさせないで欲しいわ。
「沙羅ちゃんから連絡は?」
と、眉間にしわを寄せている私を他所に、修二の声にいとが首を横に振る。
いろいろ悩んだけれど、私は時雨達に沙羅の事情を話した。
沙羅が行方不明になった上に緒方世那という存在が現れてしまっては、これ以上彼らに伏せておくのは不可能だったから。
それに私は表では動けるけれど⋯⋯裏ではむやみに動けない。
「こっちも色々と探ってはいるが、なんせ元々情報がないからな」
正直、彼らが沙羅のことを探してくれているのは、随分と心強かった。
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