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また夢を見た。写真の中の彼女———————恵美子さんの夢を。
私のいちばん幸福な記憶。
物心ついた時から両親がいない私は、小学生になる歳に恵美子さんのもとへ引き取られて、彼女と2人で暮らすようになった。
1人暮らしの恵美子さんの昔ながらの家はとても広くて、かなり田舎な所にあった。
電車はもちろん、バスも1日3本しか通らないような田舎だったけど、優しくて陽気な恵美子さんと自然の中で私はのびのびと育った。
—————————恵美子さんが亡くなったのは、小学6年生の冬。卒業間近の2月のことだった。
放課後、私が学校から帰ったときには既に心臓が止まっていて、病院ですぐに死亡が確認された。
恵美子さんの家がかなり不便な場所にあったということもあり、身寄りがいなくなった私は、中学校へ入学と同時に田舎を離れて1人暮らしをすることになった。
1人暮らしも4年目となる現在は高校1年生。
通勤ラッシュで人が溢れる電車に乗って揺られること約20分。
電車を降りると同じ制服を着た人が一気に増えて、流れに沿って駅を出る。
歩きながら小さく息を吐いて、学校が近づくに連れて重くなる足を動かした。
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