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「⋯⋯そうだけど」
そんなことより、早く携帯を返して。
急かすように手を更に前に出すけど、泉はそれを華麗にスルーして「くれ、それ」とお弁当を指差した。
⋯⋯⋯⋯。
なんだろう、会話が全く噛み合わない。私の貴重な休み時間をどうしてくれる、と目の前の泉を睨む。
「嫌」
そもそも何で私が泉にお弁当あげることになるの?
「何で」
「こっちのセリフ」
「お礼だろ」
これの。
そう言って泉は私から遠ざけるように携帯を持つ手を高く挙げた。
———————数分後、私はソファに座ってお弁当を食べる泉をぼんやりと眺めていた。
⋯⋯どうしてこんなことになったんだ。
はやく帰りたいけど私のお弁当は泉の手の中。それより、
「ねえ、携帯」
本来の目的はこれなのに泉はすっかり忘れてたようで、少しの沈黙があってから「ああ」と思い出したように私に携帯を差し出した。
受け取ってからすぐに携帯を開く。彩香から昨日のことについて連絡が来ているはず。
「⋯⋯⋯⋯」
画面に表示された文字を読んで、ゆっくりと目の前の泉を見た。
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