美しい獣

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「⋯⋯言ってないの?私のこと」 彩香からの連絡には、私がここの生徒だとは気づかれてないと書かれていた。それは泉が知らせていないから。 私の問いかけに、泉は口の中のものをゴクンと飲み込んで、口を開いた。 「気づかれないために、あんな格好したんだろ」 だから、言ってない。 当然のようにそう言う泉に思わず面食らう。実はもう既に彩香の話はこの学校にも広まっていたから、私もタイムリミットが迫っていると思っていた。 ⋯⋯でも、よかった。本当によかった。 泉は気まぐれで言わなかったのかもしれないけど、理由なんてどうでもよくて。結果的に私のことは気付かれていないのだから、心の底から泉に感謝する。 「これ、」 と、いつの間にかお弁当を食べ終わった泉が目線をこちらに向ける。 「明日も作って」 そう言ってからっぽのお弁当箱を私に差し出す。 「なんで?」 「うまかった」 「嫌って言ったら?」 無駄だと思うけど、一応拒否はしてみる。 「お前のことバラす」 ほらね、と心の中で呟きながら予想通りの返事にため息が漏れた。
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