美しい獣

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「⋯⋯わかった」 まあ、黙ってくれると思えばお弁当なんて安いもの。それにお昼を過ごす最高の場所まで得られて、一石二鳥だ。 私が心の中で前向き思考に変換しているとき、遠くからチャイムの音が聞こえた。おそらく昼休憩終了の予鈴。 そろそろ行こうと私が立ち上がるけど、泉は立ち上がらないどころかソファに寝転ぶ。 「授業、始まるけど」 「昼寝」 ⋯⋯そういえばこの学校はこれが当たり前だった。私のように真面目に毎日全ての授業を受けるほうが少数派。 「沙羅」 遅れるから行こう、と部屋を出ようとした時、泉が私の名前を呼ぶ。 「また明日」 真っ直ぐに私を見てそう言う泉を横目に、ゆっくりと扉を閉めた。
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