日常

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私の通う高校は、不良と呼ばれる人種が生徒の大半を占める学校で、ガラが悪ければ評判も悪い。 「生徒の主体性を育て自由を尊重する高校」らしいけど。おかげで生徒は自由を満喫しすぎてますけど。 校則なんてあっても守る人なんているわけもなく、緑や赤の髪色ももう見慣れてしまった。 長い黒髪を下ろして、模範的に制服を着こなす私は、この学校ではかなり影が薄い地味な存在だと自覚している。 その証拠に、入学して半年以上過ぎたというのに友達と呼べる人すらいない。 でも人付き合いが苦手な私には、このくらいの平和な日々がありがたい。 今日も誰とも会話することなく、静かに教室へ入って黙々と授業を受ける。 クラスでも完全に孤立している私はもちろんお弁当を誰かと食べるということもなく、昼休憩は、いつも1人で中庭で過ごす。 4時間目の授業が終わり、お弁当を片手に渡り廊下を歩いていると、体育倉庫の前、複数の女子生徒が1人を囲むように集まっていた。 ⋯⋯⋯⋯またやってるよ。 明らかにいい雰囲気ではないけど、囲まれているのはきっと沢原(さわはら)いと。 姿が見えなくてもわかるのは、彼女があのケバい女達の逆鱗に触れてしまったから。 学校で話す人がいない私でさえ知っているのだから、このことは全校生徒が知っている。 「時雨(しぐれ)くんに守ってもらったとか思ってる?」 「調子乗んな!」 「時雨くん達が迷惑してんのわかんないの?」 ああ、うるさいな。 ヒステリックに叫ぶ声を聞きながら、巻き込まれないように早歩きでその場を離れる。 沢原いとの言い返す声は、一度も聞こえることはなかった。
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