美しい獣

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「つまらないわ」 ⋯⋯⋯⋯驚きすぎて一瞬固まった。 いきなり立ち上がりそんなことを言った彩香に、部屋中の視線が一気に視線が集中する。 その視線はどれも冷たくて、敵意さえ感じられる。 静まり返った室内、本条が近くの男を呼び寄せて何かを伝えると、その男は沢原さんと数人の男達を引き連れて部屋を出て行った。 「⋯⋯何の真似だ」 「私はあなたに会いにここへ来ているの。どうしてあの子ばかり構うの?」 彩香の質問に、本条は口を開かない。 「前にも言ったはずよ?あの子をここへ連れてこないでって」 目障りだわ。 吐き捨てるようにそう言った彩香は、本条達からするとただの我が儘な女。 なるほど、この1週間はこんな感じだったのか。これは距離が縮まるはずがない。 そんな彩香に対して本条は何も言うことなく、ただ静かに見据える。 ⋯⋯不思議な男だ。自分達の空間に我が物顔で居座る女を追い出さず、自分が囲う女を罵倒されても何も言わない。 何が不気味かというと、本条の言葉ひとつで私達は簡単にこの建物から追い出されてしまうのに、彼がそれをしないことだった。 と。 「ふざけんじゃねえ!!」 本条の方を見ていると、苛立ちを含んだ声が部屋に響いた。
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