美しい獣

18/26
前へ
/84ページ
次へ
「えっと⋯⋯これはどういう状況?」 入り口のほうから聞こえてきた声に振り向くと、室内を見渡してそう言う修二。 「⋯⋯⋯」 「⋯⋯あの」 無言でタケを見る泉くん。彼に威圧されたのか、タケはゆっくりと後ずさった。 「お前ら遅いんだよ」 ため息を吐く時雨に修二が苦笑いを浮かべる。 「とりあえず座ったら?」 ソファの前で立ったままの私達を修二が不思議そうな顔で見る。 「私達ちょうど帰るところだったの」 私の言葉に、怒りの収まっていない様子のタケが目を見開く。 その視線を無視して沙羅に目を向けるとコクンと頷く。 「では、また」 帰り際、ほんの一瞬、沙羅と彼の視線が交わったように感じたのは、気のせいかもしれない。
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加