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泉が部室へ来たのは、土日を挟んだ週明けの日だった。
「あ、」
扉を開けるといつもの位置に座る泉が目に入って、思わず声を漏らす。
「⋯⋯久しぶり」
私の言葉に頷いた泉は、私がソファに向かう途中もジッと私を見ている。いや、正しくは私の手元。
「弁当、ない」
先週まで2つ作っていたお弁当。泉がしばらく来ないから、自分の分だけになっていた。
沢原さんはお弁当を渡した次の日、綺麗に洗った容器を律儀に返してくれた。新しく買ってしまったものと合わせて、使わないお弁当箱が2つ、家の棚に置いてある。
「⋯もう来ないと思ったから」
だって食べないのに勿体無いし。
すると泉は、いつも無表情の顔を少しだけムッとさせて、奥へ行ってゴソゴソと何かを探り始めた。
そして棚の上にある電気ポットをセットして、チラリとこちらを見る。
「⋯⋯なに拗ねてんの」
カップ麺を食べるらしい泉は、明らかに恨めしそうに私に視線を送っている。
「弁当、うまいのに」
食べたかった、とポツリと呟く泉に、今度は私がムッとする。
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