君に、一輪の愛を

美しい獣

「泉は、仲が良いってわけじゃなさそうだから」

私の言葉に、泉は雑誌を閉じてテーブルの上に置く。

「別に、なんとも」

あまりに簡潔な返事にどう返していいのかわからず黙っていると、泉が続ける。

「時雨が連れてきた女。それだけ」

無機質な、何の感情もない声に、この男はどんなことに心が揺さぶられるのだろうと、ふと思った。

「⋯⋯沢原さんがいじめられてることは？」

私の言葉に、泉は今度は首を傾げることなく沈黙する。

本当に、ここ最近の私の言動は自分でもよくわからない。自分から何かを探ったり、求めたりすることなんて無かったのに。

彼らは、沢原さんが過激派の女子達からいじめを受けていることを知っているはず。だからこそなるべく彼女の側にいて、彼女が１人になることが無いようにしている。

それでもいじめが無くなっていないことも知っているはずた。

きっと本気で本条がいじめている女達に制裁を加えれば、沢原さんが被害を受けることは無くなるだろう。なのに現状はこれ。

彼らが何を考えているのか、沢原さんと接してから、ほんの少し、気になった。