聖夜の事件

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聖夜の事件

「あら、タケちゃん」 「タケちゃんって呼ぶなって言ってんだろ!」 「じゃあ、タケルちゃんでいいかしら?」 「はあ、うぜぇ⋯⋯」 クラブの前でばったり会ったタケが、鬱陶しそうに盛大なため息をつく。 本名は(たける)というらしい彼に、いつものように彩香が絡んでいる。 部屋の連中は彩香と私に関わることはほとんど無いけれど、タケだけは彩香に嫌悪感を丸出しで、彩香はそれを面白がっているのかよく言い合いをしていた。 クリスマスも近く外は寒くて、吐く息は白い。 まだ言い合いをしている2人についてクラブに入ると、今日もフロアに人はいない。 「ずいぶんとお休みが長いのね、このお店」 彩香の言葉にタケの反応はない。 クラブはもう1週間以上この状態で、学校でも派手な子達が騒いでいた。 2階へ上がるとすでに来ていた沢原さんがチラリとこちらを見て小さく会釈する。 ここに出入りするようになって時間が経ったけれど、私はもちろん、彩香と沢原さんの仲は相変わらずで。 他人行儀というか、彩香は私の正体がバレてはいけないから距離を保っているようだけど、あちらも歩み寄る気はなさそうだった。
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