聖夜の事件

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「っ、!?」 ガラスが割れるような、けたたましい音が開いたままの扉から聞こえて思わず耳を塞ぐ。 「奥に入って!」 扉の前にいた私と彩香の背を押しながら、真木が急いで扉を閉める。 「2人はいとについて行って!」 驚いた顔をしながらも、真木の視線に頷いた沢原さんに私達もついて行く。 私と彩香は最初に来た時に応接室のような部屋に行っただけだから、他の部屋は知らないけれど、沢原さんはどんどん奥へ進んでいく。 沢原さんはひとつの扉の前で立ち止まりドアノブを回す。 「⋯⋯寝室?」 中央にベッドが置いてあって、ほかに家具はなにもない。 「仮眠室、らしいです。時雨や修くんはここに泊まることもあるから⋯⋯」 彩香の呟きに沢原さんが控えめに返す。そのとき、段々とこちらに近づいてくる足音が聞こえたかと思うと真木が顔を出した。 「鍵は閉めて、クローゼットに入っておいて。誰か来ても絶対開けないようにね」 私達を安心させるためかいつも以上に優しい口調で言った真木は、沢原さんが返事をする前に扉を閉めた。
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