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「⋯⋯⋯」
クローゼットのなかでギュッと手を握る沢原さんと、何かを考える彩香は黙ったまま。
だけど今なにが起こっているのかは3人とも理解していた。
きっと下では乱闘が始まってる。相手が何人いるのかは知らないけど、私達が奥に入るのと同時に下へ降りて行った人数は明らかに少ない。
相手がここへ辿り着くのも、時間の問題だった。
「⋯⋯いとさん」
沈黙を破ったのは彩香だった。沢原さんが「え?」と気の抜けた声を出す。
「修二、どうしたの?」
その言葉に沢原さんが目を見開く。
どういうこと?真木の様子がおかしいってことだろうか。
「熱が、40℃近くあって⋯⋯」
「え、」
沢原さんの声に今度は私が目を見開く。
⋯⋯言われてみると、いつもより余裕がなさそうだった気がしなくもない。
そんなの全く気が付かなかった。さっきのやりとりでそれを見抜いた彩香に感心する。
彩香はふぅ、と小さく息をついたかと思うと、クローゼットを開けて窓の外を覗いた。
「彩香?」
「このままではダメよ」
2人も見て、と彩香に言われるままに窓の外を見る。
「なにあれ⋯⋯」
窓の外には部屋にいた人数とは比べものにならないくらいの数の男達が、クラブの入口を塞ぐようにバイクを停めているのが見えた。
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