聖夜の事件

7/31
前へ
/84ページ
次へ
「きっと中にはもっといるわ」 沢原さんの顔は血の気が引いていて、薄暗い部屋でも青白くなっているのがわかる。 「でも、どうするの?」 このままではダメだといっても、どうしようもない。ここから出たって捕まるのはわかっている。 私の言葉に彩香はにやりと口角をあげて、言った。 「決まってるわ。窓から飛び降りるのよ、沙羅が」 「⋯⋯⋯は?」 当然のようにそう言う彩香に、思わずそんな声が漏れる。 「裏口のほうは人が少ないわ。あの倉庫に飛び移ってそこから降りれば行けるでしょう?」 確かに裏口のほうは人が少ないし、1階に降りれないこともない。 私が窓から外を見渡していると、さらに彩香は続ける。 「ここにいても捕まるだけよ。それなら脱出して時雨達に助けを求めたほうがいい。だけどあの人数に気付かれないように脱出するのは難しい」 沙羅ひとりなら別だけれど、と彩香が確信を持ったように私を見つめる。 「できるでしょう?」 よく言う。その目つきは「やれ」と言っているようなものだ。頷く私も私だけど。 「さて、いとさん」 私の返事に満足そうな顔をして、彩香が沢原さんのほうを向く。 「私と一緒に⋯⋯」 ガンッ!!!!! 突然、扉が蹴られたような音が聞こえたかと思うと、ドアノブがガチャガチャと動きだした。
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加