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「きっと中にはもっといるわ」
沢原さんの顔は血の気が引いていて、薄暗い部屋でも青白くなっているのがわかる。
「でも、どうするの?」
このままではダメだといっても、どうしようもない。ここから出たって捕まるのはわかっている。
私の言葉に彩香はにやりと口角をあげて、言った。
「決まってるわ。窓から飛び降りるのよ、沙羅が」
「⋯⋯⋯は?」
当然のようにそう言う彩香に、思わずそんな声が漏れる。
「裏口のほうは人が少ないわ。あの倉庫に飛び移ってそこから降りれば行けるでしょう?」
確かに裏口のほうは人が少ないし、1階に降りれないこともない。
私が窓から外を見渡していると、さらに彩香は続ける。
「ここにいても捕まるだけよ。それなら脱出して時雨達に助けを求めたほうがいい。だけどあの人数に気付かれないように脱出するのは難しい」
沙羅ひとりなら別だけれど、と彩香が確信を持ったように私を見つめる。
「できるでしょう?」
よく言う。その目つきは「やれ」と言っているようなものだ。頷く私も私だけど。
「さて、いとさん」
私の返事に満足そうな顔をして、彩香が沢原さんのほうを向く。
「私と一緒に⋯⋯」
ガンッ!!!!!
突然、扉が蹴られたような音が聞こえたかと思うと、ドアノブがガチャガチャと動きだした。
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