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「ここにいるんだろお?開けてくれよー!」
「俺らと遊んでよ!ひゃははははは!!」
扉の向こうから聞こえる狂ったような笑い声が耳に響く。
男達はどうやら気が短いようで、今にも開きそうな勢いで扉を蹴ったり叩いたりしている。
「時間がないわ」
彩香がちらりと視線を沢原さんに向ける。
「⋯⋯わかりました」
「⋯⋯!」
彩香とともに捕まる了承をした沢原さん。だけどその目はひどく虚ろで、心臓が締めつけられたような感覚がした。
ありがとう、と彩香がお礼を伝えて、ガラリと窓を開ける。その間も沢原さんは開きそうな扉をぼんやりと眺めている。
「沙羅、これ持って行って。きっと役に立つわ」
彩香は肩に掛けていた小さなショルダーバッグを私の首に通して斜めに掛けた。
「ありがとう」
その間も気になるのは沢原さんで。彼女は本当に大丈夫だろうか⋯⋯。
「こっちは心配しないで。沙羅、お願いね」
彩香も沢原さんの様子に気付いているようで、私の心配を汲み取ってそう言ってくれた。
きっと彩香がいれば大丈夫だろう。私は私のやるべきことをしよう。
返事の代わりにコクンと頷いて、窓から飛び降りた。
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