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裏口まで降りて周りを確認する。
ひとり、ふたり⋯⋯表ほどではないけど、ここからでも10人ほど確認できる。
タイミングを見計らってから出ないと。全員に気付かれると逃げづらい。
そのとき、2階の開いた窓から騒がしい声が聞こえて「なんだ?」と数人が上を見上げる。きっと2人が捕まったんだろう。表の方も騒がしくなる。
数人が「確認してくる」と言って表に向かうのを見て、思いきり飛び出した。
「おいっ、一人逃げたぞ!」
やっぱり気付かれた。だけど振り向いてなんていられないから必死で足を動かす。
「待てっ!!」
そう言われて待つわけがない。
「っ、はっ、」
こんなに走るのは久しぶりで息が苦しい。恵美子さんのところではよく走り回っていたっけ。
入り組んだ路地裏を走りながらそんなことを思う。
そうして———————どれくらい走っただろう。気温は低いのに身体は暑くて、心臓が激しく脈打つ。
⋯⋯撒いたかな。
薄暗い道を抜けると、ちらほらとお店も見えてきた。
どこかに入ろうか。さっきまで追いかけてきてたから辺りをうろつくのは危ない。
とにかく、早く知らせないと。
周囲を警戒しつつ、とりあえず近くにあるコンビニに入る。「いらっしゃいませー」と抑揚のない声を発した店員はレジの奥にいるようで、こちらから姿は見えなかった。
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