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ゆっくりと息を整えて、彩香のバッグを肩からはずす。
そういえば、役に立つとか言ってた気がする。
だけど中身を見て、思わず笑ってしまった。
「⋯⋯ふっ」
自信満々の顔で言うからなにかと思えば。彩香、これきっとコンビニで買える。
「⋯⋯!」
そのとき、ガラス越しに向かいのお店にガラの悪い男達が入っていくのが見えた。
私を追いかけていた男達だ。どうやら私を探しているようで、他のお店にも男達が出入りしている。
このままだともうすぐここにも来るけど⋯⋯どうしよう。今外に出たら絶対気づかれる。
と、ガサッとバッグの中身に手が触れた。
「⋯⋯あ」
⋯⋯そういうこと。
わかったら後は早い。店の奥にあるトイレに入り先程のものを手にとる。
『拭くだけ簡単!メイク落とし』
パッケージを開いて顔に塗られたものをすべて落とす。鏡のなかの顔は、それだけでさっきとは別人になった。
そうなんだ。気づかれなければいいんだから。私が元の姿に戻ればいいだけのこと。
綺麗に巻かれた茶髪のウィッグをとると、黒髪が広がる。服の印象を変えるために黒のジャケットを脱いで、上はグレーのニットだけになる。
鏡でもう一度自分の姿を確認して、扉を開けた。
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