聖夜の事件

13/31
前へ
/97ページ
次へ
そう思った理由はやっぱり説明できないけど。 それに本条達にもいずれ同じ学校だと気づかれてしまうけど、それでもいいかと思ったから。 「そうか」 泉はふっと笑って、私の頭に手を載せる。 「⋯⋯なに」 「別に」 私、子どもじゃないんだけど⋯。 静かに睨むと泉はまた笑って、今度は自分が着ていたダウンジャケットを脱いで「ん」と差し出してくる。 「いいよ、泉も寒いでしょ?」 「寒くない」 「鼻赤いけど」 「⋯⋯」 「とにかく私は、」 「———沙羅」 ふわり、私の身体をダウンジャケットで包んで泉が私の目を捉える。 「いいから着てろ」 ⋯⋯だから苦手なんだ、泉の瞳は。泉はもうヘルメットを私の頭に被せようとゴソゴソとしている。 「⋯⋯ありがと」 「ん」 泉の後ろに乗って腰に腕を回すと、バイクはすぐに発進した。
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加