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「サラさんだって逃げてる⋯」
止まらなかった。危険を冒して走ってくれている人をこんな風に言うなんて、どうかしてるのに。
西宮さんは動揺することなく、静かに口を開いた。
「どうしてそう思うの?」
背筋を伸ばして堂々として、美しい彼女はこんなさびれた場所でも気品を放っている。
どうしてって、そうでしょう?
「普通は逃げると思うから⋯わざわざ危険なことに自分から関わらないよ」
私は身をもって知っているから。
「時雨達だって、そうだよ」
私からしたら西宮さんの方が不思議だった。ここに居ないサラさんを信じて、全て相手に従うなんて。
「沙羅は必ず時雨達を連れてきてくれるわ」
どうして⋯⋯?
「どうしてそんなに信じれるの⋯?」
西宮さんみたいに誰かに自分の全てを託すことなんて、私にはできない。
このままだったら私達はひどい目にあうのに。
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