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「沙羅」
彼女もそちらに向かう私に気づいたようで、私の名前を呼んで持っていたカップを置いた。
「早かったわね。学校終わってそんなに時間経ってないわよ?」
「遅れないように急いだら、早くなったの」
早いに越したことはない。そう言う私に彼女はクスッと笑う。
「ふふっ、沙羅ってば本当に真面目よね」
「⋯⋯それって褒めてるの?」
眉をひそめる私に、また笑う彼女。
それに小さく息を吐きながら、向かいの席に腰掛ける。
名門私立高校の制服に身を包む彼女、西宮彩香は私の唯一の友達。
「今日は沙羅の服を見に行くのよ?そんなに嫌そうな顔しないで」
私たちはこれから、近くにあるショッピングモールに行く予定。目的は、私の服を買うため。
だけど私は人が多い所は苦手だし、何より彩香の買い物は長い。気力も体力も激しく消耗するから困る。
「別にいいのに、服買わなくても」
「あら。同じ学校だとわかったときのほうが、もっと面倒になるわ」
それでもいいの?と聞かれると、返す言葉は決まってしまう。
面倒なのはごめんだから。
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