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「香織さん⋯⋯」
元気です、と伝えると電話の向こうでため息が聞こえてくる。
『ちゃんと食べてるの?お金が全然減ってないわよ』
香織さんというのは、恵美子さんの娘。
恵美子さんに私を預けたのは香織さんで、それまで私は香織さんとその旦那さんの元にいたらしい。
小さい頃のことよく覚えてない。一人暮らしをするようになってからは、生活面は全て香織さん夫婦が面倒を見てくれていた。
「最低限のお金は使わせてもらってます」
好きなものだって、買わせてもらっている。
親のいない私がこうして高校に通えていることも、何不自由なく暮らしていることも、全て香織さん達のおかげだ。
『もう、遠慮しなくていいんだからね!』
お金は好きに使っていいと、毎月余るほど口座に振り込まれている。
⋯⋯本当に大丈夫なのに。香織さんは私にとてもよくしてくれる。
『そういえば、西宮の子とはどう?』
「⋯⋯⋯」
この話は来ると思った。
だから特に取り乱すこともなく、用意していた当たり障りのない言葉を返す。
「大丈夫です。変わったことは何も」
きっと香織さんも気にしているんだと思う。私に彩香を紹介したのは、彼女達だから。
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