Prologue

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セミの鳴き声がする。 鳴り止まないそれに眉をひそめながら、額に流れる汗を腕で拭う。 ———————暑い、とてつもなく。 縁側に座って足をブラブラさせながら、近くにあるうちわに手を伸ばした。 「暑い日はやっぱりスイカよね」 突然聞こえた声に後ろを振り向くと、丁寧にカットされたスイカをお皿にのせてこちらにやってくる彼女。 にっこりと微笑む綺麗な顔には、しわが刻まれている。 「⋯⋯スイカ、種あるからきらい」 だって去年食べたとき、噛んじゃったから。 あのときの不快感は相当なものだった。あれ以来スイカっていうか、種が入ってるものは避けてしまう。 去年のことを思い出したのか、彼女はケラケラ笑う。 「大丈夫よー。食べる前に、全部種取っちゃえばいいのよ!」 じゃーん!と言って爪楊枝をドヤ顔で私に差し出す彼女に思わず笑みがこぼれる。 緑に囲まれた景色の中。 2人で笑って、彼女が私の頭を優しく撫でた。 —————————そんな彼女を失って、もう何年経っただろう。
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