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 無事に三枚目シングルのセンターを務め終えた柚那であったが、ファンからの注目度が上がり、グループとしての成長が認められたのか、四枚目シングルもセンターとして選ばれた。予想はしていたが、今回も明里以外はムスッとした表情を浮かべていた。  柚那は選ばれたからにはもっと頑張ろうと思っていたが、その頃からグループ内であることないことを吹聴されるようになった。ある日のレッスン後、いつものようにスタジオに残り、一人で黙々と自主訓練に励んでいた。そこへマネージャーが姿を現した。 「柚那ちゃん、また自主練?」 「マネージャー。そうですね、今回の振りは難しくて、ステージで間違えないようにしたいので」 「そっか。――で、最近はどう? メンバーとの仲は」 「えっと、正直良いとは言えないですけど、なるべく声をかけたりしています。あとは、明里ちゃんが間に入ってくれるので助かります」 「そっか。まぁ、あんまり無理しないで。あと、もう時間だから、帰りなさい」 「分かりました。ありがとうございます」  柚那はマネージャーに頭を下げると、更衣室へ向かった。静まり返った更衣室で自分のロッカーに鍵を挿そうと思った時、鍵がすでに開いているのに気付く。柚那は閉め忘れたのかと思い、何も考えずに開けた。 「――きゃっ!」  バシャッと音を立て、上から水が落ちてきた。柚那は頭から水浸しになった。一瞬、何が起こったか分からず、言葉を失った。 「な、何これ。誰がこんなことを」  ロッカーの上を見ると、ロッカードアの上に紐がかけてあり、開けたと同時に水の入った容器が落ちる細工がしてあった。しかし、それだけでは無かった。ロッカーハンガーに掛けてあった私服が無くなっていたのだ。もしかしてと思い、柚那はロッカールームのゴミ箱を漁った。案の定、私服はそこにあり、しかも、ズタズタに引き裂かれていた。とても着て帰れる状態ではない。 「酷い……。一体、誰が? とりあえずどうしよう。このままだと帰れないよ」  柚那は女子トイレに駆け込み、レッスン着を絞り、タオルで髪や顔を拭く。その時、女子トイレに入ってくる足跡がした。警備員やマネージャーだったら、どうしようかと頭の中をよぎったが、姿を現したのは明里だった。 「明里ちゃん」 「柚那ちゃん、どうしたの! びしょ濡れじゃん! ちょっと待ってね。更衣室に予備のタオルとかあったと思うから、今取ってくるね」 「うん、ありがとう」  明里は急いで更衣室へ向かい、タオルとジャージを持ってきてくれた。柚那は明里から受け取り、明里に礼を言った。
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