偶然 新幹線隣席

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「名古屋から乗車したら真凛の隣の席だった。偶然だよ!!」 極上な美丈夫な紳士な見た目の男が慌てふためき、新幹線の指定席特急券を仕立てのいいスーツのポケットから取り出し、私に見せる。 みどりの券売機で発券された乗車前に発券された切符の指定席は確かに私の隣席だった。 「もしかして、いまだに便利屋に私を尾行させてる?新幹線の席番の連絡を受けて乗車前に指定席をとる事できるよね……」 これまでの創真くんの行いから偶然を装ってると疑ってしまう。 新横浜駅から品川駅までの乗車時間は十一分。 指定席特急券が東京駅までの創真くんは品川駅で途中下車しなかった事にホッとする。 「さすがに三年経てば赤の他人だよね」 五歳年上の創真くんは今年で三十二歳になる。 私も二十七歳になった。 「いい加減、創真くんに惑わされる生活を抜け出さないとな……」 創真くんの事を嫌いになったわけではない。 ヤラカシタ創真くんと恋人関係には戻れないけど友達には戻れるなら戻りたかった。 だけど、創真くんの狂気に満ちた付き纏い行為に、震えが止まらなくなるぐらい恐怖を感じている。 「抽選に当たったからと都内のマンション分譲するんじゃなかった!!」 マンション価格が高騰するという情報が出回った事から、業績が不安定な企業の銘柄をいくつか手放し、都内に新築建設されたマンションを購入した。 賃貸マンションに私物を置き去りにし、毎月賃料を支払うのがもったいなかったからもある。
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