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朝起きると、ユウは元気よく「おはよう」と挨拶をし、元気よく「いただきます」朝食を食べる。
昼も元気よく「いただきます」と昼食を食べる。
夕方になると、晩ご飯の買い物に出かける母の姿を「いってらっしゃい」と見送る。
母が帰ってくると「おかえりなさい」と笑顔で出迎え、夜になると晩ご飯を食べ、ごちそうさまの数時間後に、おやすみなさいと伝え就寝する。
穏やかで平穏な一日。
そんな中でも、明日は尊敬する母の誕生日。
感謝の気持ちを込めて何かをしてお祝いしたいが、何をすればいいか分からない。
迷ったユウは、誕生日に何をすればいいか分からないと姉の渚に相談する。
「そんなの簡単だよ。そこら辺のコンビニとかで、何でもいいからお菓子をとかを買ってくればいい」
簡単に無理難題を口にする渚。
渚が何を考え、そうアドバイスをしてくれたのは受け止めていた。
最近、母、喜美江の調子は悪くなっている。
元々体力のない母が、父が亡くなってから女手一つで育ててくれていることへの感謝と申し訳なさは、母の体力が衰えている姿を見るたびに強くなる。
ユウは、決心する。
母の誕生日当日、お昼ご飯を食べ終え「ごちそうさま」と伝えた後に、ちょっとコンビニに行ってくると伝え「いってきます」と家を出た。
家から歩いて三分ほどのコンビニ。
母が好きな和菓子を購入し、速やかに会計を済ませたユウは、他に何も見ずに家へ帰り元気よく「ただいま」と伝え、玄関で待つ母に「誕生日おめでとう」と和菓子をプレゼントする。
ユウのプレゼントを受け取った喜美江は、涙を流しながらユウを抱きしめ「頑張ったね」と褒め称えた後に「ありがとう」と喜んだ。
五年ぶりに聞いたユウの「いってきます」と「ただいま」が、喜美江にとって何よりのプレゼントだった。
了
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