01-01 一目惚れ

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01-01 一目惚れ

「試合に出るから応援に来てほしい。賑やかしに友達をなるべく多く連れてきてくれると盛り上がるから嬉しい」  彼氏にそう頼まれてほいほいと首を縦に振り応援団員集めに奔走していた友達に連れられて、大学のサッカー部の試合観戦にやってきた。  サッカー。という球技について知っていることは、15人くらいのチーム編成でワーッとボールを追いかけて取り合って蹴って、ゴールに入れたら点が入る、ということくらい。  全然興味がない。日本代表がW杯でどこかの国に大金星を上げたらしいときも、わたしは「ふぅん、そうなの」って感じで特に感情の振れ幅はゼロだった。  なぜなら、勝った相手国がどこかも、その国が日本とどれくらい実力差があるのかも、そもそも日本の実力もなんにも知らないし知る気もないのだから、どうにも反応しようがない。  それならなぜ友達の誘いを断らなかったのかと言うと、スケジュールがちょうど空いていたのと、シンプルに友達のことが好きで、その子が困っているなら手を貸してあげたいと思ったからだ。  ……だなんて友情でのこのこやってきたはいいが、その善意の選択を早くも後悔している。  友達は彼氏の応援のために最前列を取りわたしはそのとなりに座っているのだが、いかんせんルールが分からないせいで、笛が鳴って試合がいったん止まるタイミングがまったく分からないし、どっちがどっちの陣地なんだっけというところからもうよく分からないし、そもそも友達の彼氏すら広いグラウンド上で見失ってしまった。  ただ分かるのは得点ボードの点差は1-1で引き分けていて、かれこれ三十分くらい点が入ってなくて、見ていてとても退屈だってこと。  サッカーって試合時間どれくらいなんだろう? 野球みたいに延長あるのかな?
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