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高校一年の秋に転校だなんて、憂鬱で仕方なかった。どうしてこんな中途半端な時期なの!そう言いたくなるのをグッと堪える。大変なのは私だけじゃない。……わがままなんて言っちゃダメだ。突然の転勤にお父さんたちだって困ってるんだから。
新しい学校、新しい制服、新しい担任の先生、新しい教室ーーー。緊張が募っていく。強く握り締めた手に汗が滲んだ。転校生の姿に新しくクラスメートととなる生徒の視線が突き刺さる。まるで品定めをされているみたいだ。
「えっと……小川楓です。横浜から来ました。よろしくお願いします」
まばらな拍手が送られた後、先生が私の席を教えてくれた。教室の右側にある窓際の席だ。そこへ移動し、隣の席に座っている大人しそうな女の子に話しかける。
「よろしくお願いします」
「う、うん。よろしくね」
女の子は緊張したように上擦った声で言うと、すぐに黒板の方を向いてしまった。私はため息を吐きたくなるのを堪え、一限目の英語の教科書を机の上に出した。
転校生というものはアニメなどでは注目される存在で、休み時間になればクラスメートから取り囲まれて質問攻め……なんていうのは現実ではほとんど起こらない。質問攻めにあうのは可愛い子だけ。地味などこにでもいる私にみんな興味はない。
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