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【精霊と白き神の山】
さきほど「ミケ」と呼ばれた男の人は、自身が神や精霊の声を聞く力をもつことや、私が目覚めるまでの経緯を、かいつまんで話してくれた。
私が山に帰れなくなってから、百年以上が経過しているらしい。
「ついでに言うと、僕の名前はミカエルなんですけどね…。」
呼び名に不満があるらしいその微妙な表情に、思わず笑ってしまう。
山の頂にいた白き神の傍らに立って、辺りを見渡す。
時間はたってしまったけれど、それでも帰ってきたのだ…私の居場所に。
「シロ…私、帰ってきましたよ…?」
胸がいっぱいになり、思わず声がふるえた。
「遅くなってしまって…お待たせしてしまって…ごめんなさい…!」
こらえきれずにあふれた涙をそっとぬぐってくれた白き神は、いたずらっぽく笑って言った。
「少しくらいの遅れだ、もちろん許す!よく戻ったな、タマ。」
ああ、こんな感じだった…私たちのやりとりは。
「少し…!?あ、ありがとうございます…!」
なんてしあわせな時間。
けっして当たり前のものではない、大切な時間。
ただいま、私の愛する神さま。
これからは、ずっとおそばに。
(終)
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