星に願いを 君に灯を

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「どうやって死んだか覚えてる?」  彼女と話せるのもこれで最後だろう。  心のどこかでそう思っている自分がいた。だから、少しでもこの時間を引きのばしていたかった。 彼女が何の未練もなく、天国に昇っていくために。 「覚えてるよ。事故だったんだ。わたしは初めてできた彼氏と歩いている途中だった」 「デート中だったんだ」  心に苦い失望がひろがる。  そして、次の瞬間その感情を打ち消した。  彼女にとってはとても幸せな一日だっただろう。自分が死ぬと知らなければ。 「夕方、帰る途中だったんだ。初めてのデートはとっても楽しかった。広い公園に行って、展望台にものぼって、よく晴れてて、風が気持ちよかった。道路を横断したら、信号無視の車に跳ねとばされたの。さいわい彼氏は軽傷で、でも苦しかったと思う。目の前でわたしが倒れたから。救急車がすぐに来て病院に搬送されたけど、わたしの方はもう心肺停止状態で……こんな話聞きたくないよね」  知らないうちに顔を歪めていたのだろう。  ハッとしたように彼女がそう言った。その体が薄くなる。もうそろそろ時間なのだ。彼女もそれを知ってるようだった。 「今日は話しすぎちゃった。今夜が最後だったから」  今夜が最後。  やっぱりそうだったのだ。  だから、彼女は余計に僕に時間を割いてくれた。 「最後の手紙は彼氏宛て?」  僕がそう尋ねると、彼女は頬を紅潮させた。おそらく彼女が一番、気持ちを伝えたかった人。その表情だけで質問の答えがイエスだとわかる。  ここまでやって、最後の手紙だけ断るわけにもいかない。たぶん、その場所も自宅からそんなに遠くないだろう。 「また投函する前に、なかを見ちゃうと思うけど」  最後の手紙が彼氏宛てなら、正真正銘のラブレターだ。それを僕が見てもいいかは微妙な問題だった。彼女と付きあっていた彼氏は、さぞ悲しんだことだろう。  だから、彼女はほうっておけなかったのだ。死後の世界から手紙を届けたいと思うくらい。  対して彼女の反応は今までとまったく同じだった。 「見てもいいよ。ちゃんと手紙を届けてくれるなら」
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