side:紬希

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 ーーはじまりは、5月。  お昼過ぎ。大学の授業帰りに、いつも通る道から少しそれたところにある通りをなんとなく通った。  意外にも、カフェや雑貨屋など、おしゃれな店が立ち並んでいる。  いろいろなものに目移りしながら、ゆっくりと歩いていると、美味しそうな匂いが香ってきた。 「パン屋『』」  その看板を見つけて、吸い込まれるように店の中に入った。  店内はおしゃれで落ち着いた雰囲気。外からは見えていなかったが、奥にはイートインスペースもあった。  トレイとトングを持って、店内を1周する。いろいろな種類のパンがあって、どれも美味しそうで迷ってしまう。  悩んだ末に、塩パン、クロワッサン、メロンパンを選んで、レジに向かった。  レジには、若い男性の店員さんがいて、スタンプカードにスタンプを1つ押して渡してくれた。  500円でスタンプ1つ。スタンプが40個たまったら、パンの詰め合わせがもらえるようだ。  店内のイートインスペースに座り、まず塩パンを口に運んだ。生地はもっちりとしていて、中からじゅわっとバターが染み出してきた。上にかかっている塩の粒もいいアクセントになっている。  続けて食べた、クロワッサンとメロンパンも、サクッとしていて、甘さとバターのバランスが絶妙で美味しかった。
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