side:紬希

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 『つむぎ』のパンの虜になった私は、定期的に『つむぎ』に行くようになった。  授業が午前中で終わる日に寄って店内で食べて帰ることもあれば、大学に行く前にパンを買って持って行くこともある。  そして、1日1個ずつスタンプを集めた。  売られているパンの種類が多いため、基本的には毎回違うパンを楽しんでいる。  『つむぎ』では、毎週のように新しいパンが並べられていた。それらのパンは、その週だけしか置かれていないこともあれば、人気だった商品は定番化されることもあるようだ。  ある日、新しく並んでいた「オクラパン」が気になって購入した。  丸い生地の真ん中がへこんでいて、その上にオクラとチーズがのっている。オクラは横向きに切られていて、星を集めたような見た目でかわいい。  意外な組み合わせにも関わらず、食べてみると想像以上にマッチしていて美味しかった。  翌々日も、オクラパンを選んでレジに向かった。レジをしてくれたのが、よく見かける店員さんだったので話しかけた。 「このパン、とっても美味しかったです。」 「……ホントですか⁉︎ よかった……嬉しいです」  そのパンは、偶然にも彼の発案で作られた商品だったらしい。  そう答えたときの彼の無邪気な笑顔が、いつも見せる営業用の作られた笑みとは違って、少しドキッとした。
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