白紙の本

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白紙の本

図書館は僕の唯一の居場所だ。 いろんな世界や国を見に行けて、いろんな人の生活を覗ける。 それが楽しくてたまらない。 小学生の頃から放課後は図書館に入り浸っていた。 学校に友達はおらず、家に帰っても両親は共働きで兄弟もいない僕は、本だけが遊び相手だった。 それは中学になった今でもそう。 部活に入っていない僕は、学校から帰ってから着替えもせずに図書館へ向かう。 今日は何を読もうかと本棚を見て回る。 静かな図書館で足音すら消して歩いていた僕は、真っ黒な背表紙にタイトルも書かれていない不思議な本を見つけた。2センチほどの分厚い単行本だ。 気になって手を取った本は、表紙も裏表紙も真っ黒だった。 図書館にある本は、上に図書館の名前が分かるようなハンコがあるのだけれど、この本にはそれがない。バーコードやICタグもなく、背表紙にラベルもなければ、カバーにフィルムのコーティングもされていなかった。 図書館の本ではないのだろうか。 僕は首を傾げ、あらゆる角度からその本を見てみた。 悪戯で黒いカバーを付けられているのではなさそうだ。 中をパラパラと捲ってみると、横書きの本であることが分かった。 僕はその本を持ってカウンターにいる司書さんに声をかけた。
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