1人が本棚に入れています
本棚に追加
ーー
アパートに帰ってから本の続きを読む。
まるで僕の行動を見ていたかのような情景描写が本に記されていた。
借りた本に忍ばせて無断で黒い本を持ち出したことまで書かれていた。
続きのページを読み進めれば、まるでこれから起こる未来なようなことまで綴られていた。
――家に帰ってからまた本を読む。
さっきの言葉が気になって瞬きも忘れて本を読みふける。
書かれているのは自分の行動。
気になってさらに読みすすめる。
しかしそこでインターホンが鳴り、手を止めざるを得なくなった。
読んだ直後、図ったようにインターホンが鳴らされた。
だけど来客よりも今はこの本の方が気になる。
――来客よりも本が気になる。
けれどこの来客には出るしかない。なぜなら相手は近所に住む祖母だからだ。どうやら作りすぎたおかずを持ってきてくれたらしい。
まさか現実と本がリンクしているわけでもないだろう。
そう思いながら、もしも客人が祖母なら出ないわけにはいかない。
僕は一度本を置き、インターホンを鳴らした相手を確認しに行った。
『白斗? いないの~?』
インターホンの画面に映る祖母の口の動きと、玄関の方からうっすら聞こえた声が同じだった。
本で読んだのと同じ状況……。
鼓動が早くなり、背筋に冷たい汗が伝った。
『白斗~?』
祖母の声で我に返った僕は、慌ててインターホンの通話ボタンを押した。
「ごめん、ばあちゃん。今出るよ」
『なんだ、いるじゃない』
最初のコメントを投稿しよう!