運命を操る本

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だけど、本には終わりが付きものなわけで。 ハッピーにしろバッドにしろ、物語は終わるのだ。 この本を見つけたころよりも白紙のページが随分と減っていた。 もしも僕がこの本を開かなければ、本は終わらないのだろうか。僕の運命は綴られないのだろうか。ページを開くから綴られていくのだろうか。 どうすればこの本をもっともっと長く使っていられるかを考えるようになっていた僕は、今更この本を手放せるほどの精神を持ち合わせてはいなかった。 危うくない運命を見ていたかった。 授業で誤答をして恥をかくなんて嫌だった。 できることなら会う時間の少ない親に褒められていたかった。 思春期で反抗期なんて中学生では普通だろうけど、それを周りに当たり散らさない大人な自分でいたかった。 間違えないように本で自分の行動を見た。冷静に動けるように対処した。 続きを記す内容に間違っていなかったと安堵した。 本を手に入れてからそうしてきたように、僕はこれからも安定した日々を送って行くのだと思っていた。 それなのに。 それなのに。
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