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検索してみて、あ、これって思うことは結構ある。
欲しかった物だったり、
知っている人だったり、
例えば、2人の関係を言い表わすものだったり。
暗い部屋で、タブレットの光の中、さらに輝くその光は、俺達みたいだ。
出張で一緒に上海に行く度に、星が見えないと恋人が言ってくるから、東京でも見えないじゃんと俺が言うと、学生時代は上海で暮らしていた俺と東京出身のお前でお互いむきになって、星が見える見えないですぐに言い争う。
別にその時は、本当は星が見える見えないというのはどうでもよくて、お互い自分の出身地を必死で庇って、相手を否定して、そうしてどうやったって解決できない話題で、普段の相容れないことを何となく許容して、というより受け流して、一緒にいられているような気がする。
それは、あくまで俺が勝手に思っているのだけれど。
だから、星が見たいなとは思ってたんだ。
この前スキー場に行った時に見られるかと思ったのに、星なんて全然見られなくて、雪だけが綺麗に舞ってはいたけれど、寒いし、膝が痛い彼はホテルから出ないって言うし、そしたら俺だって出られるわけがないんだし。
だから星に執着しているのは仕方がないんだ。
何となく検索してたら、出てきた星座。
自分で自分の誕生日を検索して、いつの間にか、
「4月 星」
なんて検索していて、そしたら出てきた星座、しし座。
俺と恋人の誕生日の真ん中の、春が始まる季節に南の空に輝く。
よくよく見てたら面白いことを発見して、これは彼に見せてやろうとリビングに行くと、出張と週末のバスケで疲れている彼が、ソファーでうとうとしている。
短髪したばかりの髪の毛は、彼の肌の白さを際立たせて、
ますます柔らかそうにみえるその頬は、触らずにはいられないほどの可愛らしさで、思わず、人差し指でつついてしまうと、ふわりとした感触に何だか妙な気持ちになってしまって、覗きこんだまま固まっている俺に、
おそらく何か嫌な予感がしたんだろう、彼が目を開けて、眉間にしわを寄せた。
「何もしてないよ。」
すぐさまそう言うと、
「・・・何も言ってないけど?」
そう言って、冷めたコーヒーを一口飲んで、何か用?と聞いてきた。
眠りを邪魔されてで少し機嫌が悪い。
「ねえ、ちょっと部屋来て。」
「何で?俺疲れてる。」
「別に変なことしたいんじゃないよ。見せたいものがあんの。」
「あー、動きたくない。」
「じゃあ、抱っこしたげる。」
無言で俺を見る恋人。
「だから、変なことしたいんじゃないんだって。」
別に弁解する必要もないのに、必死になってきた俺を可哀想に思ったのか、腕を伸ばして、抱っこを要請した。
コアラみたいに抱っこして部屋に行くと、閉まりきってなかったドアを足で開けた。
ベッドに彼をおろすと、何だか諦めたような顔をして、俺の首に回した腕をそのままにキスを強請った。
「疲れてるんじゃなかったの?」
「したいんだろ?」
「別にしたくて部屋に連れてきたわけじゃないよ。」
「じゃあ、しないの?」
「したくて連れてきたわけじゃないけど、してもいいならしたいよ。」
「じゃあ、しとく?」
「じゃあって何?お前がしたいなら俺だってしたいよ。」
腕を離した彼は、俺を横目で見ながら膝を抱えた。
「お前だって疲れてるじゃん。疲れてるのにしたいなんて言えない。」
「ん?何?したかったの?」
しばらく考え込んで、言葉を選ぶのをやめたのか、勢い込んで話し始めた。
「やると疲れるけど、お前と一緒に裸で寝てると落ち着くの!疲れるけど、疲れがとれんの!それなのに、最近出張別が多いし、何だよ、俺ばっかしたいみたいじゃん!じゃあ、もういいよ、しない!」
言い終わるが早いか、がばっと壁に向かって横になると俺に背を向けた。
ちらりと見える耳が赤い。
そして俺の好きな小さな手で顔を覆った。
何かまだぶつぶつ言っている。
彼に見せようとしていた机に置いていたタブレットを見た。
画面の明かりは消えている。
窓もないから、星も見えない。
星はすぐに消えてなくなるわけじゃないし、別に急がなくたって大丈夫。
ベッドにそっと足を掛けて、彼に聞こえるように服を脱ぎだした。
こっちを向きたいのは分かっている。
裸になって、彼の横に座ると、背中を下から上にゆっくりと撫で上げる。
シャツを脱がすように直に肌に触れると、それはもう愛撫としての行為で、それだけで彼が熱い息を吐いた。
結局こっちを向いた彼は、シャツに手を掛けたままの俺の手を払うと自分でシャツを脱ぎ始めた。
ふてくされた様に脱いでいる姿がおかしくてかわいくて、脱ぐのを待って、愛しくて仕方ない頬に触れると、目を閉じて重みを俺に預けた。
心地よいその重さは、俺に身をゆだねる恋人の信頼で、
俺の信頼を感じてもらうように、唇を重ねた。
本当は全裸にならなくたって、やることはやれる。
服を着たまますることだって、もちろんある。
でも、彼が言ったみたいに、裸で抱き合って眠ると気持ちがいい。
裸で俺の中にすっぽりと収まる彼を抱きしめて眠ると、
2人の温度が少しづつ、一緒になっていくのが感じられる。
同じ温度で、同じ鼓動で、同じように寝入ると、
疲れだって、悩みだって、不安だっていつの間にか小さくなって、
目が覚めて、一番最初に視界に入るその愛しい顔を見ると、
世界で一番幸せになれる。
優しく深くしていくキスで彼の体温が少しだけ上がる。
その熱を追うように、ゆっくりとキスの場所を移動させていく。
首すじ、鎖骨、
体を少しずらして、彼の肩甲骨にキスをすると、甘い吐息がこぼれた。
彼は肩甲骨にキスをされるのが好きだ。
自分が好きだから、無意識なのかもしれない。
仕事中にも関わらず、俺の肩甲骨をさっと撫でるくせがある。
その肩甲骨を甘く噛んだ瞬間、彼があっと声を漏らした。
昂ぶる声に誘われて、調子に乗った俺は彼が嫌いな四つん這いの格好になるように腰を引き上げた。
嫌だと逃げる腰を引きとめて、もう一度肩甲骨を噛んだ。
優しく、でも跡が残るように噛んだその快感に震えると、逃げることをやめて、こちらを振り向き、潤んだ目で俺を見た。
あぁ、星みたいだ。
潤む瞳が、輝く。
俺が部屋に呼んだのは、星の話がしたかったからなのに。
恥ずかしさを忘れるように、彼の硬さを持ったそれに触れてしごきだすと、少しだけ腰を揺すり始めた。
先走ったぬくもりと、たらりと零した俺の唾液で、はっきりと見える後ろを音をたてて弛めるように指を抜き差しすると、照れくささを忘れたのか、腰をつきあげた。
指を2本に増やして、奥まで差し込んだ指の関節を曲げた。
「あっ!・・・ちょっ、だめ、だめ。」
声を上げながら、前に逃げようとする腰を再度掴んだ。
それでも、指は引き抜かなかった。
さらにかき回しながら増やした指に限界を感じたのかすすり泣きを始めた。
「気持ちいい?入れてもいい?」
もう言葉にならないようで、何度も頷いて涙する姿に煽られて、
勢いよく埋め込んだ俺の熱は、彼の熱を吐き出させた。
イッたばかりなのに、俺が腰を動かすのをやめないのが辛いのか、嫌だ嫌だと頭を振っているが、腰はつきあげたまま激しくなる俺を受け止めている。
涙でなおいっそう輝くその瞳が俺を見て、吐息と共に漏らした言葉に、泣きそうになった。
「お前も気持ちいい?お前も幸せ?」
あぁ、もう、だめだ。
嫌いな格好をさせられて、俺のタイミングで引き出される快感を受け止めて、
それなのに、幸せだって。
繋がったそれはそのままに、彼の体をいきなり反転させると、強く抱き締めた。
きつく抱きしめたまま、無言で腰を振り出した俺に、また勝手に興奮を高められた彼は、俺の背中にしがみついた。
そして、お見通しなんだろう。
激しく揺れる中、優しく俺の頭を撫でた。
どうしたって、惹きつけられる。
離れることは許されない。
泣きながらバカみたいに腰を振る俺の速度に合わせて揺れて。
星の話がしたかったんだ。
しし座にレグルスっていう一等星があって、それは獅子の心臓って言われてて、何だかかっこいいなって。
そしたら、その心臓の上を、二つの星がぐるぐる回ってるって知ったんだ。
美しいと有名な二重星、アルギエバ。
お互いの引力で引き合って、離れられない連星。
あ、これってって思ったんだ。
俺達の誕生日の間、空に輝くその連星は、俺達のことみたいだって。
どちらかの引力が強くてもだめなんだ。
同じだけの引力は、離れていても、いつもの場所に引き戻す。
俺がいつもこうやって甘やかされているように、同じように甘えていると分からせてくれる行為は、いつも俺を、何度でも、変わらずお前に引き戻す。
吐きだした俺の熱もそのままにゆるゆると動かし続ける行為は、彼の感度を上げていく。
顔を上げた俺の顔を、両手でばしっと掴んで離すと、
「あー、疲れた。けど、気持ちいい。」
そう言って、俺の顔を見ながら緩やかに動き出した。
もう一度、愛を注ぐように続く行為に、彼の瞳が優しく微笑む。
また泣きそうになった俺が、目を逸らすと、ちゃんと動いてと腰をつきあげた。
星を見ているみたいだ。
白い肌に浮かぶ汗がキラキラと輝く。
星の話は、いつかまた、上海の星が見えないと言い出した時にしようか?
今はまだ、俺を甘やかして離してくれない、
タブレットの光の中の星より輝く、
恋人を、
同じように甘やかすのに、忙しい。
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