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「お、お母様!びっくりするじゃないですか!」
ゼェハァと息を乱しながら驚く娘をよそに、エリザベスは頬に手を当てため息をついた。
「いけない子ね、レイラ。あなたったら、お父様が大切にしている私の写真を焦がしちゃっただなんて。そりゃあ怒るわよ、あの人」
「だって、私のこと大好きだから」とさも当然のように続ける母に、レイラは「た、確かに」と頷いた。娘のレイラから見ても、二人は仲睦まじい夫婦そのもの。いかんせん父よりも母の方が力関係は強い感じがするのだが、なんだかんだでエリザベスもファリスを大切にしていることをレイラは知っている。
「……お母様は地下室で実験していたことを怒らないのですか」
しおらしくそう尋ねるレイラに、エリザベスはふと頬を緩めた。
「自ら勉強する、その姿勢を母は誇らしく思いますよ。……あなたも、いつまでも子どもじゃないんだもの。立派な魔法使いになるため、勉学に励むことは悪いことじゃないわ」
「お母様……」
やさしげなエリザベスの目に、レイラの瞳が煌めいた。と、そのとき──。
「レ・イ・ラ〜!」
エリザベスとは反対隣から、地を這うような低い声が聞こえてきた。レイラがびくりと肩を震わせると、般若のような顔をした父ファリス。
「あ、あら、お父様。どうしたのかしら?」
冷や汗を流しながら、なんでもない風を装ってレイラがそう返せば、父は端が焦げてしまった母の写真をレイラの眼前に突きつけた。……半泣き状態で。
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