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「これは何だ!父さん、お気に入りの母さんの若かりし頃の写真がこんなことに……っ!ほら、写真の中の母さんも少し怯えているだろう⁈」
レイラが写真を覗き込む。この世界の写真は、魔法の力で写真に映ったものは動く仕様になっており、確かに写真の中のエリザベスは焦げたところを見遣っては、ひょいとそこから離れる動作を繰り返していた。
「ごめんなさい、お父様……」
レイラがしゅんとしたフリをして謝ると、
「まったく、あれだけ地下室での実験は禁止だと言っているのに。今回は写真で済んだが、お前に怪我でもあれば父さん心配しすぎて泣いちゃうからな!」
だなんて、簡単に騙されてくれるファリス。一方、生身のエリザベスは
「あらやだ、若い頃の私ってば、しおらしいわね。今だったら、焦げる程度の炎を見たくらいでは動じることなんてないけれど」
と、言って、かつての自分の姿をどこか楽しげに見つめていた。それから杖を取り出り「リペアート」と唱えると、みるみる内に焦げた部分が元通りになり、あっという間に写真は修復された。
「こんなの、魔法で直せば済む話でしょう?」
やや呆れた様子のエリザベスに、ファリスは「でも、写真の中とはいえ、君に怖い思いをさせたことが僕は忍びなくて……」とかなんとか言っている。
「いつまで経っても、優しいのね。あなたは」
手と手を取り合って、見つめ合う両親にハハと乾いた笑いが漏れるレイラ。仲がいいのは良いことだが、娘の前では少し自重してほしいと思うのだった。
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