プロローグ

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プロローグ

あれは、辺り一面に色とりどりの花が咲き誇る、風そよぐ春の季節。 「大きくなったら、私アンリお兄様と結婚するわ。立派な魔法使いになって、私がお兄様を守ってあげる」 レイラ・フローレンスは、近所に住む10ほど歳の離れた幼馴染であるアンリ・アルフォードに、そう宣言した。歳の離れた妹みたいな存在の少女から、思いがけず男前な告白を受けたアンリは、目をぱちぱちと瞬かせた後、口元を手で押さえてぷっと噴き出した。 「レイラが僕を守ってくれるの?それは頼もしいな」 「あ、お兄様!信じてないでしょう?私は本気なんだから」 白銀の長い髪をなびかせながら、レイラはムッとした表情をする。喜怒哀楽が随分とわかりやすい少女に、アンリは深い海のような美しい青の瞳を見つめながら、ふと頬を緩めた。 「……じゃあ、いつか楽しみにしているよ。君が僕を守ってくれる、立派な魔法使いになるその日が来ることを」 「約束よ?そのときは、私を絶対アンリお兄様のお嫁さんにしてよね」 強引な、けれど一途な少女をどこか微笑ましい気持ちで見つめながら、アンリは「ああ、わかったよ」と頷いた。 そして、手に持っていた花冠を彼女の頭に乗せてやると、「レイラ」と優しく微笑んだ。まるで、美しく輝く宝石のように──。 「そのときは、僕が君を……世界一幸せな花嫁にしてあげるから」
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