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「サッカーですか!凄いですね…。僕、運動があまり得意じゃないので尊敬します…!」
「別にそんなに大したことないよ…。瀬名君と近江君は?何か部活とかやるの?」
純粋な眼差しで褒めちぎる傘峰君に困った顔でそう返した輝は、会話の中心を瀬名達に移した。
「…やらねぇ。」
「ん〜……俺も別に何も。いろいろあって忙しいし。」
「そうなんだ。二人共結構運動得意そうなのに意外だね。」
輝の問いかけにそう返答した二人は、確かに体格が良くて運動が得意そうな見た目だがどちらも部活には興味なさげだ。まぁこの二人の場合は「めんどくさい」ってのも理由の一つにありそうだけど。
そんな会話をしていると、俺達はいつの間にか教室に戻って来ていた。だがまだ帰ってきていない班が多かったので、俺達は残りの班が帰ってくるまで再度雑談を続けた。
「凛堂先輩は何かスポーツとかやってたんですか?」
何となく気になってそう尋ねてみると、凛堂先輩は自分に話が振られると思っていなかったのか、少し遅れて返事をした。
「…あぁ。一応身を守るためにと空手を習っていたな。今は忙しくて続けていないが、風紀委員の活動に役立っているな。」
「それは…良かったと言うべきか、良くないと言うべきか…。」
「ははっ、これからは役に立たせずに済むと良いんだがな。」
うわぁ…何か他人事じゃなくて笑えねぇ…。
凛堂先輩の言葉を聞いて、俺は先輩に対して同情のような、共感のような気持ちを抱いた。凛堂先輩も心なしか顔が死んでいる気がして怖かった。
「…あれぇ、瑞生ちゃんじゃーん。もう帰ってたんだぁ。」
俺達がそんな会話をしていると、突然背後からそう声をかけられた。あ、いや、声をかけられたのは俺じゃなくて凛堂先輩だけどね。
「…朝霧か。何の用だ。」
凛堂先輩は声をかけてきた相手を視界に入れると途端に不機嫌そうな顔をしていた。そんな先輩を見て、一体誰が声をかけてきたのだろうと思った俺が振り返ると、そこには何だか見覚えのあるチャラそうな男が立っていた。
「別にぃ。知り合いがいたら声くらいかけるでしょぉ?あ、もしかして嫌だったぁ?ごめんねぇ。」
挑発的な視線を向けて、相手を煽るような口調で凛堂先輩と話しているのは、確か昨日食堂で見た生徒会の中にいた男だった。
俺は先輩達のただならぬ気配を感じて、近くにいた傘峰君に小声で話しかけた。
「…ねぇ、何であの二人、あんな空気悪いの?」
「へっ?あぁ…えぇと…。」
俺が突然話しかけてきたことに驚いたのか、傘峰君は一瞬戸惑った顔をしていたが、すぐに小声で俺の質問の答えを教えてくれた。
「実は、今年の生徒会と風紀委員会は仲が悪いんですよ。生徒会長と風紀委員長の仲が絶望的に悪いのが原因らしいんですけど、詳しくは僕も知らなくて…。とにかく、あまり生徒会と風紀委員会を近づけないようにっていうのが暗黙の了解らしいです…。」
「?でも、生徒会長と風紀委員長の仲が悪いだけなら、別に他の役員とか委員は関係無いんじゃ…?」
「それが、生徒会長が嫌がらせでたまに仕事を風紀委員会に押し付けてるらしくて…。それで風紀委員のヘイトまで生徒会に向いてるんです…。仕事を押し付けてくる生徒会長も、それを止めない他の生徒会役員もどちらも許せない、と…。」
へぇ…。小学生でももっとマシな喧嘩しそうだけどな…。金持ち坊っちゃんとか聞いて呆れる。
傘峰君の話を聞いた俺は、口には出さなかったものの、頭の中ではそんなことを考えていた。だってあまりにも幼稚だし。
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